サン・マロ Saint-Malo
「サン・マロ Saint-Malo 」は、フランスの北西部ブルターニュ地方にある小さな港町です。
英仏海峡からの外敵を防ぐため、旧市街は12世紀に造られた重厚な城壁で囲まれています。
この街には、フランスの三ツ星シェフたちから注目されている最高級バターの店「ラ・メゾン・デュ・ブール・ジャン・イヴ・ボルディエ La maison du Beurre Jean-Yves BORDIER 」があります。
ジャン・イヴ・ボルディエさんのお店は、フロマジュリー(チーズ屋)でもあるので、お店に入るとショーケースの中には様々な種類のチーズが並んでいます。
しかし、さらに奥に進むと私が本当にワクワクさせられる展示が!
私が憧れてやまない「手作りバター」の機械器具の数々です。
バターは牛乳の中に含まれている乳脂肪を集めて固めたものですが、現在、大規模なバター工場では、その一連の作業が近代的な「連続式バター製造機」で行なわれています。
しかし、かつては牧場から運ばれてきた牛の乳を、遠心分離器にかけて生クリームを分離し、乳酸菌で発酵させ、それを壺や樽に入れて撹拌(チャーニング)し、分離した乳脂肪の固まりを練りあげてバターを作っていたのです。
このように、伝統的な技法によって作られたバターは、「ブール・バラット beurre baratte 」と呼ばれ、バターのパッケージにもそう明示されています。
ボルディエさんのバターは、これらの伝統的な技法に加え、さらに最後の練りの作業まで「マラクサージュ Malaxage 」と呼ばれるこだわりの手作業で仕上げられています。
マラクサージュというのは、円盤の台の上にバターを乗せ、溝のたくさん入った木の棒をゴロゴロ転がしながら、丁寧にバターを練り込んでいく作業。
この練りの作業によって、乳脂肪でできたバターの組織のキメが細かくなり、非常になめらかなバターに仕上がるのです。
(上の写真の奥に、マラクサージュに用いる円盤の台が写っていますね)
お店では、バターの大きな固まりを切り分けて計量し、木べらでトントンと練って形を整え、包装紙で包んで販売しています。
ブルターニュ地方には、有名な「ゲランド Guérande 」の美味しい塩がありますので、「有塩バター Beurre demi-sel
」の生産が多いのですが、それに加えボルディエさんのお店には、海藻入り、ユズ風味、スモーク風味など、様々なバターが販売されています。
特に、この「海藻入りバター」は秀逸なお味です。
日本では、一部の輸入品以外あまり見かけないので、冬場のフランス土産にもお薦め。
もし、帰国便がパリ発であれば、市内にある
「ラファイエット・グルメ(ギャラリー・ラファイエットの食品フロア)」
「ル・ボン・マルシェのグランエピスリー(食品館)」
などで購入し、保冷袋に保冷剤と一緒に入れ、トランクの中に詰めて帰ればOKです。
パンに塗っても美味しいし、料理のソースに使うこともできます。
もうひとつ、日本人にとって珍しい飲み物をご紹介しましょう。
ボルディエさんの「レ・リボ Lait Ribot 」
バターを作る時、発酵させた生クリームを樽や壺の中で激しく撹拌(チャーニング)し、乳脂肪を固める工程があります。
この工程で、バターから分離して出てくる液体を「バターミルク」と呼んでいます。このバターミルクを飲料にしたものが「レ・リボ」なのです。
ほんのり酸味と発酵フレーバーのあるあっさりした飲み物で、そば粉のガレットと一緒に飲まれたり、パンやお菓子の生地に混ぜ込んで使われたりしています。
マルシェ(市場)の乳製品のお店でも、牛乳の隣に並んでいたりするので、見かけたら試飲してみるのもよいかもしれません。
ブルターニュ地方は、乳製品の宝庫。
いつかきっと、レンヌのボルディエさんの工場を訪ね、ボルディエさんがマラクサージュ作業をされているところを見学するのが私の夢のひとつです。
最後に、ボルディエさんの「素敵な動画」をご紹介します!
↓
YouTube - lipdub jean yves bordier
ボルディエさん&工場の皆さんが、とてもチャーミングで楽しい!
(写真撮影 2012年10月)
ラ・メゾン・デュ・ブール・ジャン・イヴ・ボルディエ