フィゲラス Figueres
スペインのカタルーニャ地方バルセロナから北東へ120km、あと20km行くとフランスとの国境というところに「フィゲラス」という小さな街があります。
この小さな田舎町を一躍有名にしたのが、20世紀初頭この街で生まれ、最終的にこの街で亡くなった鬼才「サルバトール・ダリ Salvador Dalí (1904 -1989 ) 」。
私が大好きな画家のひとりでもあります。
この街には、かつて廃墟となっていた劇場をダリ自身が関わって改修し、造り上げた夢の美術館があるのです。
ダリ劇場美術館 Teatre- Museu Dalí
「ダリ劇場美術館 Teatre- Museu Dalí 」は、外観のデザインも超奇抜です。
「シュルレアリスム Surréalisme(超現実主義)」の天才画家であったダリに相応しいシュールな建物となっています。
美術館の屋根の上には、ダリが好んで用いたモチーフの「卵」「マネキン」「フランスパン」のオブジェがたくさん並べられています。
そして周囲の壁には、上の写真のように、この地方特有の三角パン(pa de crostons)のオブジェがビッシリと貼り付けられているのです。奇天烈というか、ダリ独特の美意識が建物にも表現されているのですね。
美術館の入り口
アル・カポネのキャデラックを加工した「雨降りタクシー」など、奇抜なオブジェが並べられている中庭を抜けて、ガラスのドアを入ると大きなホールが
サルバトール・ダリは、自らの創作活動の手法を「偏執狂的批判的方法(Paranoiac Critic)」と呼んでいました。
奇天烈な容貌やコスチューム、大きく見開かれた目、突飛な行動などから、ダリはややもすれば狂人的な画家であると考えられていますが、しかし、彼の創作物を冷静に観察すると、物理学的、数学的、哲学的に計算されたかのような、実に「知的」なものが感じられるのです。
たとえば、ダリの絵の多くは「多重イメージ」という手法で描かれていて、見方によって何通りにも解釈できます。
この美術館のホールの奥にある絵(上の写真)も、近くから見れば裸婦の後ろ姿、遠くから見ればリンカーンの肖像画にみえるという具合です。
「焼いたベーコンのある自画像」
「軟らかい自画像 SOFT SELF PORTRAIT」と書かれた台の上に、焼かれたベーコンが1枚置かれています。
その上にある垂れ下がった皮膚のような顔は、実はシスティーナ礼拝堂にある「最後の審判」の中にミケランジェロ自身が描いた皮膚状の自画像を意識して描かれたものと言われています。
まさに哲学的でシュールな自画像、鑑賞する側に相当な思考力を要求する絵ともいえます。
「記憶の固執」を用いたタペストリー
有名な「軟らかい時計」をモチーフにした代表作「記憶の固執」のオリジナルは、現在NY近代美術館に所蔵されていますが、そのデザインを用いたタペストリーが寝室の壁にかけられています。
ダリがこの多次元的な「軟らかい時計」の形態をインスピレーションしたのは、ひとりで留守番をしながら、夕食で食べた「カマンベールチーズ」のことを瞑想している時だったといわれています。
この「軟らかい時計」の世界をインスピレーションできたことにより、ダリの絵画は一気に異次元の世界へと昇華できたのだと思います。
この他、ダリ劇場美術館には、1万点以上の大小の絵画やオブジェなどが展示されていて、ゆっくり見学したら半日以上かかってしまいますね。
ダリ宝飾美術館 Dalí·Joies
「ダリ宝飾美術館 Dalí·Joies 」は、「ダリ劇場美術館」の隣に建てられています。
ダリのデッサンに基づいて作られた素晴らしい宝飾品の数々が展示され、元のデッサンと宝飾品を、それぞれ比較しながら鑑賞することができます。
この写真の美しい宝飾品も、ダリのデッサンとよく見比べると、一番上に乗っているのが小さなリンゴなんだと分かる仕組みです。
「ダリ劇場美術館」へ行かれたら、ぜひこの「宝飾美術館」も合わせてご覧下さい。この美術館だけでも、行く価値があると言えるほど素晴らしい展示の数々です。
フィゲラスへは、バルセロナから電車で片道2時間。
ところで
日本でもお馴染みの「チュッパチャプス」
このバルセロナ生まれのポップなキャンディについている「黄色いデージー(ヒナギク)模様」のロゴ。
このかわいいロゴをデザインしたのがサルバトール・ダリであるということをご存知でしょうか?
とてもビビッドでモダン、印象的なロゴですよね。
ダリ劇場美術館
Plaça Gala-Salvador Dalí 5, Figueres