美味しそうなパンの焼き色も「メイラード反応」の生成物
ふっくらと焼けたパン、本当に美味しそうな焼き色ですね。
実は、このようにパンの表面に美味しそうな焼き色がつくのは、オーヴンの中のパンの表面で「メイラード反応 Maillard reaction(アミノカルボニル反応)」という化学変化が起こっているからなのです。
この「メイラード反応」は、20世紀のフランス人科学者ルイ・カミーユ・メヤール(Maillard)が解明した化学反応です。
しかし、今や「食品」と「健康」の両方の分野で大変注目される「キーワード」となっていますね。
(注:メイラードはMaillardの英語読み)
それでは、「メイラード反応」がどのようにして起こるのかを説明しましょう。
メイラード反応の生成経路
「メイラード反応」の原料となる物質は、
1.アミノ化合物(アミノ酸など)
2.還元糖(ブドウ糖、果糖など) です。
食品の中に含まれるこれら「2つのグループ」の物質が、非酵素的に結合することによって一連の反応がスタートします。
(非酵素的というのは、酵素の力を必要としないという意味)
それでは、この「アミノ化合物」「還元糖」とはどんなものなのでしょう?
1.アミノ化合物を含む食品
「アミノ化合物」というのは「アミノ基(-NH2)」を持っている物質という意味で、代表的なものに「アミノ酸」があります。
「アミノ酸」は、タンパク質を構成している成分ですね。
ですので、タンパク質を含む食品、例えば牛乳・ヨーグルトなどの「乳製品」や「卵」などにもアミノ酸は多く含まれていますし、「肉」「魚」など一般食品にもアミノ酸は広く含まれています。
2.還元糖を含む食品
「還元糖」というのは、「還元基(-CHO)」という構造を持つ糖類のことで、ブドウ糖、果糖、乳糖など、甘味を示す比較的小さなサイズのものが多く含まれています。
お菓子作りに使われる果実や蜂蜜にはブドウ糖や果糖が大量に含まれていますし、粉類にも還元糖が広く含まれています。
そして、上の図のようにいったんメイラード反応が始まると、次々と分解や結合を繰り返して、最終的に「メラノイジン」という褐色の物質ができ上がります。
実は、この「メラノイジン」は単一の物質ではなくで、様々な種類の褐色物質が混じり合っているものなのです。
そして面白いのは、これらの「メラノイジン」は下の表のようにそれぞれが独特な香りを持っていて、多くの食品の大切な香りのもとになっているということです。
たとえばチョコレートの焙煎工程なども、このメイラード反応を上手にコントロールできないと、チョコレート特有の芳醇な香りを導き出すことができません。
メイラード反応によって、実に様々な香りが生じていることが分かりますね。
様々なパン、スポンジ生地、焼き菓子、クッキー、キャラメル、チョコレートなどの美味しそうな香りや風味もメイラード反応のお陰ですし、ローストした肉の色や旨味、焼き魚の独特な旨味や香り、味噌や醤油の美味しそうな色、これらもメイラード反応がもたらしてくれます。
私たちは、気付かないうちにメイラード反応で作られた様々な香りや風味を日々楽しんでいるわけですね。
メイラード反応で美味しそうな焼き色のついた料理やパンお菓子の例