2017年2月
ここ数年、バレンタインシーズンにおける西の雄ともいえる大阪・阪急百貨店の「チョコレート博覧会」!
毎年ユニークな企画を打ち出して、私たちチョコレートファンを楽しませてくれています。
今年は、
「チョコレート博覧会(阪急百貨店)」が1月25日〜2月14日、
「サロン・デュ・ショコラ東京(伊勢丹)」が2月1日〜2月5日、
という厳しい日程だったため、両者のイベントが完全に重なった2月上旬、どちらの会場に駆けつけるべきか頭を悩ませた熱狂的なチョコレートファンが多かったのではないでしょうか。
私もそのひとり。
チョコレート博覧会の「カカオワールド」会場
さて、私が今年の阪急の企画の中で特に注目したイベントのひとつは、
2月12日、マルセル・プレシラ Maricel Presillaさんの
「モレソース・セミナー」でした。
マルセル・プレシラさん
「モレソース」というのは、魅惑のメキシコ(2)でもお話ししましたが、ソースの材料に「チョコレート」を用いるメキシコの名物料理です。
マルセルさんはキューバのサンティアゴ・デ・クーバ出身。
ニューヨーク大学で中世スペイン史文化人類学の博士号を取った才媛で、ニュージャージー州のホーボーケンにレストランとチョコレートショップを経営する傍ら、本の執筆や研究活動など、様々な分野で活動を行っています。
近年は、インターナショナルチョコレートアワードの創設メンバーとしても知られていますね。
マルセルさんの著書
「THE FOOD OD LATIN AMERICA GRAN COCINA LATINA」
カカオやバニラなど熱帯作物にも造詣が深く、モレソースなどに使われるトウガラシについても大変こだわりがあります。
自宅の庭でも多品種のトウガラシを栽培しているそうで、今回のセミナーにも、様々なトウガラシを持参し、ひとつひとつ解説して下さいました。
色も大きさも様々ですが、トウガラシって本当に可愛らしいですね。
マルセルさんの話によると、使うトウガラシによってモレソースの色彩や風味も大きく変化するそうで、マルセルさん自身が最も好きなのは、チレ・ムラート Chile Mulatoという大きくて黒い品種のトウガラシだそうです。
(写真の左下がチレ・ムラート)
異なるトウガラシで作ったモレソースの比較サンプルも見せていただきました。
トウガラシの種類によってソースの色彩も実に様々なんですね。
(これ、台紙にソースが直接塗ってあるので、本当に香りが感じられるんですよ)
どのモレソースもスパイシーで非常に個性的な香りがして、トウガラシだけでこんなに風味が変化するんだと感心させられました。
なんといっても、中南米は「トウガラシの故郷」ですし、個性も風味も豊かなトウガラシが多く、選択肢がたくさんあるのは羨ましい限りです。
そろそろ完成!
チョコレートソムリエ札の谷加奈子さんの進行で和気藹々とモレソース作りのセミナーが進んでいきました。
そして、このモレソースを試食して感じたのは、マルセルさんのモレソースは、昨年私がメキシコの古都プエブラで食べたモレ・ポブラーノ Mole poblanoとは全く異なる、とてもスッキリした滋味あふれるお味だなということでした。
もちろん、メキシコにおける「モレソース」は、日本における「味噌汁」ように「それぞれの家庭で異なる味がある」と以前から聞いてはいたのですが、まさにそのとおり、こんなに違うのかと驚かされました。
そして、もうひとつの味の決め手。
今回のモレソース作りに使われたのが「CACAO HUNTERS」のチョコレートだったということも非常に大きかったと思います。
雑味がなくてスッキリとした旨味、モレソースにおける「チョコレートの存在」も、トウガラシと共にとても大きいと改めて実感させられました。
(ネットリと重いチョコレートを使えば、モレソースも濃厚で重い口当りになります)
ところで、私が昨年巡ったメキシコでは、市場でこんな風に各種モレソース用のペーストが量り売りされていました。
まさに、日本の朝市の味噌売り場のようですよね。
メキシコのチョコレート屋さんでも、甘いチョコレート製品の隣でモレソース用のペーストが売られています。
でも、私はいつか自分のメタテとマノを使って「究極のモレソース」を作れたらいいな・・と思っています。
セミナーでマルセルさんが紹介されたみたいに。
どうですか、メタテとマノを使うと雰囲気が格別しょ。
昨年メキシコで食べたモレ・ポブラーノ Mole poblano
モレ Moleの語源は、Mulli(ソースの意)だそうです。